CoC英語シナリオ「Dead Boarder」紹介&和訳メモ

www.nicovideo.jp

「海外の面白そうなシナリオを、(全部訳すのは面倒なので)セッション時に即興で訳してプレイしてみよう」というアイデアで行った"翻訳卓"企画。この度その第一回がリプレイ動画にまとまりました(まとめました)。セッション時には諸般の事情から元シナリオにやや大きい改変を加えたのですが、和製シナリオや和訳シナリオと比べて原典の確認が面倒臭く、改変部分の確認が手間かと思うので、動画を見て/説明を読んで元シナリオに興味を持っていただいた方のために、備忘録もかねてもともとのシナリオの概要と改変点をまとめておきます。

シナリオについて

 Dead Boarder(死んだ下宿人) はクトゥルフ神話TRPGの開発元であるケイオシアム社純正の、CoC7向け拡張デモシナリオで、同社HPより無料でダウンロードすることができます。確認した限りでは既存の邦訳はありませんでした。もともと1時間の時間制限シナリオだったものに手を加えて制限なしのシナリオにしたものとのことで、デモシナリオだけあって、探索から交渉、戦闘に至るまで、クトゥルフ神話TRPGの基本要素をしっかり抑えたお得なシナリオとなっています。さらに、描写や分岐も丁寧なので、KP初挑戦の人にも優しいつくりといえるでしょう。また、ラヴクラフトの時代のプロヴィデンス(ラヴクラフトの故郷)を舞台とし、謎めいた遺体、ちりばめられた魔術的なアイテムと、クトゥルフ神話自体を愛好する人にも嬉しい要素も大いに盛り込まれています。
 難点としては現時点でルルブの邦訳がないCoC7専用シナリオであること、使用PCを予め用意された中から選ぶ形式である(=持ちキャラが使えない)ことがあげられますが、これらの難点は、後述のように微妙な改変を加えるだけで解消可能です。

翻訳について

 KPの私がセッション時に即興で訳しているので、細かい部分で誤訳がある可能性が高いです。根本的なミスはない……はず(期待)。また、文章の通りをよくするために派手な意訳をかましている場合もあるので、シナリオのディティールに関しては話半分でお願いします……。余裕が出たり要望があったりしたらシナリオ全体の訳もいつかあげるかもしれません。

改変部分

1.舞台
 リプレイ内でも言及がある通り、参加者の持ちキャラの国籍の都合上、シナリオ全体の舞台をアメリカ合衆国プロヴィデンスからドイツのベルリンに移しています。といっても事件自体は普遍性があるものなので、実際の改変部分は冒頭の時代描写、隣人の名前、貨幣などの細部のみです。被害者や下宿の名称は、途中でこんがらがるとまずいのでそのまま残しました。当時のドイツの生活に関する日本語資料がセッション時あまり見つからなかったので、時代考証はたぶん専門家が気絶する程度に粗雑なものとなっていることでしょう。

2.CoC6用へのアレンジ
 先述の通り元シナリオはCoC7専用なので、日本ではまだ主力のCoC6で運用できるよう、新規追加技能関連で簡易的に対応を行いました。
 ・魅了(Charm)→APP×5
 ・脅迫(Intimidate)→言いくるめ
 ・鑑定(Appraise)→値切り
 ・生存術(Survival)→幸運
 ・駄目押し判定(幸運による再判定)なし
 ただしこの場合プレイヤ側でCoC7技能を指定しないと判定できないので、実際には「~したい」という要望に対し「では魅了/脅迫… で判定します」という形で行っています。
 9/13追記:CoC7のルルブを読んでみたら、CoC6以前からの変換方法がしっかり書いてありました。

3.キャラ選択制の廃止
 本来は用意されたキャラシートから好きなものを各自選ぶ形式だったのですが、人数制限がかかる上に、動かしにくいキャラにあたる悲劇が生じる可能性があるため、廃止しました。代わりに、参加者から事前にキャラシートを受け取り、必要な役職(事件に関わりうる立場)に割り振る形式をとっています。(キャラ選択制は基本的に導入を簡単にし、キャラシ作成に慣れない初心者でもプレイできるようにするためのものなので、この程度の対応で案外うまくいきました)。ただし、一部、普通取らないような特殊な技能を要求する判定があるため、その情報を与えたい場合にはやや手の込んだ対応をする必要があります。(その情報がなくともクリアに差し支えはありません)詳細はネタバレになるので記事後半で述べます。

4.うっかり改変
 動画内・仲間内では言えなかったのでここで自白します。訳し忘れがありました。詳細はネタバレになるのでこちらも後述。

5.後日談
 後日談は完全に創作です。当然ながらネタバレになるので後述します。

ネタバレ要素を含む解説

 ここから先は、シナリオ全体のネタバレにつながる情報を含みます。シナリオをプレイ予定の方、動画を未視聴の方はお気を付けください。

ギリシャ語入門

 元シナリオでは、ガーディナーにPCの書店員が貸した本の一冊として「ギリシャ語入門」が登場しますが、特に機能の説明はありません。しかし今回、キャラ選択制を廃止したことで、ギリシャ語の技能持ちがおらず(本来は用意されたキャラの中にギリシャ語持ちが存在)ギリシャ語のメモを解読できないという事態が生じました。そのため、この「ギリシャ語入門」を使ってメモを解読できる仕様にしています。現実的に考えて文法書があっても読めるはずは無いのですが、まぁ、折角だから情報を開示していこうというスタイルでした。

・訳し忘れ

 シナリオ終盤、怪物との戦闘の際、怪物が「失われた夢の歌」を歌います。この歌の効果説明の際、「放心が解けたときにSANチェック」の一文を見落としており、その後の判定も行っていませんでした。ここに懺悔します。
・後日談
個人的に、ノーマルエンド以上の場合はストーリーの背景も全部知りたい/教えたいタイプのため、種明かしの形で後日談を設けました。ただし、進行の都合上、必要な情報を警官役のPLに渡して自由に説明してもらったので、「意訳→意訳をさらにアレンジ」という二重バイアスがかかったものとなっています。内容に致命的な誤りはありませんが、正確な内容を知りたい方は元シナリオをご参照ください。